レアメタル資源再生技術研究会

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第5回レアメタル資源再生技術研究会


第5回プログラム

概要

 平成25312()、第5回レアメタル資源再生技術研究会が名古屋市工業研究所にて開催されました。今回の研究会は小型家電リサイクル法の施行(平成2541日)に伴い、官民連携による小型家電及びレアメタルのリサイクル推進について、8名の講師による講演会とパネル討論を開催しました。参加者は産学官の本研究会会員・非会員を含め約120名でした。
 

 はじめに伊藤秀章会長から挨拶があり、小型家電リサイクルに関する環境省の基本方針及び全国自治体のアンケート結果の報道が紹介され、本研究会では収集・分別回収・運搬の方法や中間処理の技術、製錬・精製技術の課題、さらにリサイクルビジネスの経済性等について発表と討論を実施したいと述べました。また、昨年の国際協力シンポジウムの配付資料等のCD及び映像DVDの紹介、本研究会への入会案内、分科会活動について説明がありました。
 

講演会では、レアメタルリサイクル技術に関する2件の講演(名古屋市工業研究所材料研究部研究員の木下武彦氏及び()産業技術総合研究所環境管理技術研究部門研究グループ長の大木達也氏)がありました。また、小型家電リサイクルに対する政府・行政・自治体の取り組みとして、経済産業省中部経済産業局の取り組み(資源エネルギー環境部環境・リサイクル課長、亀井敏之氏)、愛知県の取り組み(愛知県環境部資源循環推進課循環グループ、岡田英幸氏)、九州広域の取り組み(福岡県リサイクル総合研究センター企画主幹、中村裕康氏)、豊田市の取り組み(豊田市環境部ごみ原料推進課副主幹、近藤理史氏)が紹介されました。さらに、民間企業の取り組みとして、()アビズ(営業課課長、赤池弘充氏)及びハリタ金属()(代表取締役、張田真氏)の取り組みが紹介されました。いずれも今回の小型家電リサイクル法の施行を踏まえた収集・分別方法と選別・回収技術に関する意欲的な取り組みと研究開発の成果が報告されました。以下にプログラムに添って講演内容の概要を記します。

講演1「連続向流泡沫分離法によるレアメタルの分離回収」で木下武彦氏は、レアメタルを含む重金属の湿式分離技術のなかで講演者らが開発した連続向流泡沫分離法の特徴を述べられました。次に非イオン性界面活性剤PONPEを用いる泡沫分離法の詳細と、金およびガリウムの分離性能に関する実験結果と評価が報告されました。最後に本年210日、17日にBSフジの「ガリレオX」で紹介された本プロセスの分かりやすい映像が放映されました。

講演2「小型家電リサイクル−経産省の取り組み」で亀井敏之氏は、資源循環型社会構築の枠組みのなかでレアメタルリサイクルの重要性と課題を述べ、使用済み小型家電の再資源化に対する経産省の取り組みの現状を報告されました。中部地域においては、平成21年以降小型家電回収・リサイクルの「中部モデル」を各自治体に紹介し、回収方法の提案やリサイクラーとのマッチングを実施してきました。その先進事例を報告しながら、自治体が取り組むメリットや環境ビジネス拡大について言及されました。

講演3「小型家電リサイクル−愛知県の取り組み」で岡田英幸氏は、小型家電リサイクル制度への参加に関する自治体アンケート結果を紹介されました。これを踏まえてリサイクル技術開発動向調査事業(レアメタル)を実施中であり、小型家電、超硬工具及び自動車の3分野のレアメタルリサイクルの現状と課題について中間報告がありました。今後の愛知県の取り組みとして、レアメタルのリサイクルセンターの設置や研究会活動、補助金制度、情報発信活動、表彰制度等が紹介されました。

講演4「廃小型家電からレアメタルを回収するための物理的選別技術」で大木達也氏は、廃小型電子機器からのレアメタル回収は既存のリサイクルインフラでは対応が困難であり、製品情報の集積と手作業の自動化の必要性を指摘されました。そのために小型家電中間処理の選択肢をデータベース化し、目的とするレアメタルリサイクル(たとえばプリント基板からのタンタルコンデンサーの単体剥離)の物理選別システムを構築することが重要であると述べられました。現在開発中の廃家電製品からの様々な物理選別技術を紹介するとともに、産総研の戦略的都市鉱山研究拠点構想について説明されました。

講演5「小型家電リサイクル−九州広域での取り組み(福岡県)」で中村裕康氏は、九州15市町・2組合で実施された平成21年度から23年度の使用済小型家電の広域モデル事業の回収方法(ボックス、ピックアップ、ステーション)、回収量、対象品目について詳細に報告されました。そして、これに伴う広報・啓発活動、中間処理、製錬の実態と課題について説明されました。

講演6「小型家電リサイクル−()アビズの取り組み」で赤池弘充氏は、当社のリサイクルマネジメント指針を述べ、小型家電を対象とした清掃事業所でのピックアップ回収、それに続く搬入・事前選別(手選別を含む)、さらに高品位及び低品位家電のそれぞれの破砕・振動・磁選等による処理フローについて説明されました。処理後の鉄、アルミニウム、プラスチック、レアメタル、貴金属、ダストのマテリアルバランスについても報告がありました。

講演7「小型家電リサイクル−ハリタ金属()の取り組み」で張田真氏は、はじめに同社の経営方針を述べ、使用済小型家電機器のリサイクルループ(地域循環圏)づくりの考え方を示されました。その後、富山県で始まった使用済小型電子機器等のリサイクル推進モデル事業から北陸エリア(石川県、福井県)への波及の経緯を説明されました。さらに、国際的視点からアジアにおける無料回収E-waste処理の実態、有害金属による環境汚染の写真説明がありました。そして汚染防止と資源防衛の立場から同社が取り組む小型家電の低炭素型・低コスト型リサイクルのロジスティクス、回収・保管技術、経済性についても言及されました。

講演8「小型家電リサイクル−豊田市の取り組み」で近藤理史氏は、豊田市の清掃事業の概要を説明され、金属ごみ(指定袋に入らない金属とプラスチックの複合品のすべて)から小型家電をピックアップ回収する方法について詳しく報告されました。その結果、本回収法のメリットとして、(1)小型家電はレアメタル回収のための有価物として売却可能、(2)ガス化溶融炉で飛灰中金属含有量が減少し、飛灰処理時のキレート薬剤使用量が低減できることが挙げられました。このようにして、自治体のピックアップ回収処理が経済的にも有効であると述べられました。
 

その後、休憩を挟んで「小型家電リサイクルはどこまで進む?」と題してパネル討論会が行われました。コーディネーターにはNPO法人中部リサイクル運動市民の会理事の浅井直樹氏に依頼し、6名の講演者(赤池弘充氏、大木達也氏、岡田英幸氏、近藤理史氏、中村裕康氏、張田真氏)をパネリストに迎えて、フロアの参加者とともに熱心な討論が交わされました。

 パネル討論会の冒頭で、浅井氏から小型家電リサイクルの新制度のもとで上流、中流、下流のそれぞれの段階におけるベースメタル及びレアメタルの回収・処理・再利用に係る深掘りの討論をお願いしたいとの挨拶がありました。その後、大木氏からはFeAlCu及びレアメタルの選別技術を国の研究機関として取り組んでおり、現段階では経済的にメリットがあるAuAgPtPdTaNdDy等のレアメタルの物理選別を開発していると説明がありました。そのなかで、粉砕工程における情報のデータベース化が必要であるとの認識を示されました。これに対して、中間処理業者の立場(ハリタ金属()()アビズ)からは、採算のとれる選別・粉砕機の実用化を望んでいるが、貴金属・白金族元素以外のレアメタルの単離技術は開発途上であり、そのコストパーフォマンスの向上には同業の中間処理業者及び製錬業者との連携が重要であるとの指摘がありました。また、ガス化溶融炉への投入金属ごみからの小型家電のピックアップを実施している豊田市からは、有害金属のキレート処理費の低減や有価金属の売却が可能であり、市の環境行政全体からは経済的メリットも大きいとの説明がありました。

 一方、愛知県の岡田氏からは、ごみ処理行政の安全性や経済性に問題があり、小型家電リサイクルには積極的な自治体と消極的な自治体の差が見られること、全体としては今後の認定処理業者の申請に係る政・省令の様子見の自治体が多いとのことでした。また、九州広域でモデル事業の経験をもつ中村氏からは、オンリーワン事業では行き詰まるので、環境省・経産省の後押しとともに地域の回収処理業者、リサイクラー、製錬業者との事業マッチングを進める必要があると述べられました。行政側からは認定処理業者の申請方法及び認定基準等については公表段階ではないとの回答がありました。

 続いてフロアからの意見が求められ、宅配便を利用した小型家電のリユース、リサイクルを開始しているが、市町村との連携ができないか検討中との報告がありました。また、レアメタルの分離回収技術が未熟な段階で、無理をして小型家電を回収せず、しばらく家庭に退蔵しておくのも一案との意見もありました。他方、ストック場所を適正に確保することによって大量の小型家電を効率的に処理するシステムを積極的に推進することが先決との意見も述べられました。パネリストからも、小型家電からのレアメタル回収の意義を市民・住民にもよく理解して頂くとともに、将来的には経済性の成り立つ環境ビジネスとして成長できるように静脈システムを整備していくことが重要との指摘がありました。
 

 最後に研究会の閉会にあたり、本研究会理事の中村守氏(()産業技術総合研究所)から、今後も本研究会では小型家電のみならず産業廃棄物中のレアメタルの適正な処理システム構築に向けて産学官連携を進めていきたいとの挨拶がありました。
 

 懇親会は名古屋市工業研究所2階の交流フロアで開催されました。伊藤会長の挨拶に続いて、講演者を代表して大木達也氏及び本研究会理事の大和田秀二氏からご挨拶を頂き、中村裕康氏の音頭で懇親会が始まりました。会場では約50名の参加者が講師の先生方を囲み有意義な情報交換・交流のときを過ごしました。最後に中締めを三輪謙治氏にして頂き、第5回レアメタル資源再生技術研究会を盛会のうちに終了致しました。


 

 

 



会場の様子


質疑応答の様子


 パネル討論の様子


木下武彦氏の講演


亀井敏之氏の講演


岡田英幸氏の講演


大木達也氏の講演


中村裕康氏の講演


赤池弘充氏の講演


張田真氏の講演


近藤
理史氏の講演


コーディネーター
浅井直樹氏



パネル討論




フロアからの意見


懇親会の様子

 
 

©2011 The Research Forum on the Recycling Technology of Rare Metals